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日本地形学連合設立の趣旨
わが国は改めて申すまでもなく人口稠密であり かつ,その自然的位置と弧状列島という国土の性格を反映して緩急広狭さまざまな地形の変化ならびにそれに伴う自然災害が 年中行事のように各地で起こっています.また世界でも稀に見る活発な経済活動の全国的展開は狭隘な国土の集約的土地利用, 大規模土地改造などを促進させています.自然と人間による地形の変化がこのように激しいという点で わが国は,世界に類例のない国といっても過言ではないでしょう.
ひるがえって,自然環境の変化ならびに自然災害の様相をみると, それらは,長時間にわたる地形変化と全く同様に諸営力によって地表付近の物体, すなわち岩石,水,土壌,生物,人工物が変質・移動され,その結果として, 地表,水文現象,植生などの変化が比較的短い時間に生じたものに他なりません.
つまり上述のわが国の宿命的課題の解明はとりもなおさず地形変化機構の解明と同工異曲であり,不可分の関係にあります. したがって地形変化過程の究明は,とりわけわが国において純学術的にも社会的にも重要な今日的,かつ学際的な研究課題であります. そのため,これまでにも地形学者はもとより地質学,地球物理学,地球化学等の地球科学諸分野さらに土木工学, 農学等の隣接科学諸分野できわめて多くの研究者,技術者が地形自体,あるいは地形に深い関係をもつ諸問題の解明に従事されてきました. もちろんそれぞれの分野,研究機関によって地形の見方も地形研究の目的・方法も異なっております.
ところがこれらの研究成果は従来それぞれの専門分野の学会や機関で発表されているために, 他の分野に知られがたく,その結果,研究者の交流や研究方法, 成果の交換・活用が必ずしも円滑に進んでいるとはいえないのが現状のように思われます. 現在,地形が学際的研究の対象になりつつあることを思うとき, これはその学問の発展と社会的貢献のために誠に残念なことと言わざるを得ません.
したがって,このような点を改善するための一ステップとしても, しかるべき組織のもとで地形を共通の対象として,講演,討論(連絡誌,論文集の刊行)を活発に行い, さらに現地討議などを通じて諸分野間の人的交流と地形研究成果の交換をはかることは 地形に対する科学的認識の発展とその成果の社会的活用に資するところが極めて大きいのではないかと考えております.
以上のような趣旨で広く地形に関心を寄せられる科学者,技術者が従来の専門や所属学会にこだわることなく, 自由に膝を交えて,研究討論を行い,もって地形に関する学術の進歩に貢献することを目的として, 日本地形学連合の設立を実現する運びとなりました.
何卒,本連合の設立趣意に御賛同いただき,その発展に格別の御支援を賜りますようお願い申し上げます.
1979年10月